立春の頃、極寒の千歳川で見る朝の毛嵐やダイヤモンドダスト

千歳川とけあらし

二十四節気でいえば「立春」の頃です。

立春は暦の上では春の始まる頃とされますが、いっぽうで大寒からこの立春にかけては一年でもっとも寒い頃でもあります。

二十四節気とは一年の季節を二十四等分したもので、元は中国の気候に合わせているため、日本やましてその中でも寒い北海道では、「立春」という言葉がしっくり来ないかもしれません。

けれど、そんな季節にある「立春」という言葉は、まだまだ寒い日々を明るく照らし「もうすぐ暖かくなるよ」と教えてくれるものだと考えることも出来るでしょう。

凍える様な立春の頃、見たい風景がある

寒さで手も耳もかじかんで頭もきーんとする「立春」の頃、ぼくは札幌近郊の中でもひときわ気温が低そうな場所で、朝の風景を見て来ました。

今日はそんなお話です。そしてこの日の目当ては、千歳川で見る毛嵐(けあらし)です。

けあらしについては去年も茨戸川で見た記事を書いていましたが、もっとはっきりとモクモクとした毛嵐が朝陽のオレンジ色に染まるのを見てみたいと思っていました。

茨戸橋から「けあらし」を見た日のこと

2022年2月1日

このとても寒い季節の頃なら、そんな風景が見られるのではと思い、まだ暗い時間に自宅を出発して千歳川を目指しました。

さあ、どんな景色が見られるのか。

久しぶりの早起きでわくわくが止まりません。

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夜明け前の空の色

千歳川、冬の夜明け前

とてもしばれる朝に。

早朝のまだ真っ暗な頃に千歳川沿いの、とある街までやってきました。

気温はマイナス17℃、晴れ、無風。

美しいけあらしに出会えそうな条件が揃っています。

厚着をしてやってきた。

まだ辺りは真っ暗で何も見えませんが、もちろんこの寒さの中で風景を見たり撮ったり出来る様にたくさん厚着をしてきました。

厚手のコートの下にはダウンジャケットを、その下にはフリースの長袖。

そしてインナーは冬登山用のモンベルのジオライン。手袋は二枚重ねでニット帽にイヤーマフ。

さらにポケットにはハクキンカイロを。

ぼくが考えうるいちばん暖かそうな格好をしてきました。

空の色が明るくなってくる。

立春の頃、北海道はまだ寒い冬の朝

日の出時刻は6時50分頃。

ぼくがここへ着いたのは5時半頃で、辺りはまだ真っ暗でした。

ライトが無いと足元すらおぼつかない程の暗さですが、東の空には微かな朝の予感がありました。

夜明け前を表す言葉。

ところで、夜明け前を表すのに、辺りがまだ暗い順から「暁」「東雲」「曙」という言葉があります。

「暁」(あかつき)はまだ暗い頃を表しますが、現代では少し明るくなりはじめた頃という解釈もあるようです。

それに加えて、辺りが山々で囲まれているか、あるいは地平線辺りが見えているかの地形的な条件、そしてその場所に居た人がどう感じたかでもこの解釈は多少異なるだろうと思う。

夜から朝へのリレー

もうすぐ夜明け頃

暁のころ。

上空はまだまだ暗いけれど、ここから良く見渡せる地平線の辺りには朝の色も見えます。

さっきの「暁」「東雲」「曙」順でいえば、これは「暁」(あかつき)の頃かもしれません。

リレー競技に例えれば、次の走者が視界にぼんやりと見えてきた頃とでも言いましょうか。

シルエットの美しい時間。

カーブミラーを撮ってみると、形がはっきりとそれと分かる影になっていて、地平線辺りが微かに明るくなってきているのが良くわかります。

この時間に人物などを撮ってみれば、きっと美しいシルエットになることでしょう。

夜明け前、白くなる空の色。

夜明け前の千歳川

東雲のころ。

そうこうしていると、空が白く明るくなってきました。

そして、薄い紫色の空。

おそらくこれが「東雲」(しののめ)の頃ではないでしょうか。

これから朝が来るのだなという実感が湧きはじめます。

日の出時刻の少し前。

日の出直前の空の色

曙のころ。

時計に目をやると日の出時刻の30分ほど前になっていました。

地平線近くの空の色は更に鮮やかになり、上空の夜とこれから明ける朝の色とがグラデーションになり、その色の変化は瞬きをするたびに変わっていくのがわかります。

きっとこの頃が「曙」(あけぼの)の頃では無いかと思います。

マイナス17度の中では寒さでどうかなってしまいそうですが、朝が来る期待感と、変わりゆく空の美しい色とで、その様子をじっと眺めてはポケットにあるハクキンカイロで指先を温めるのです。

日が昇り、けあらしと朝の時間へ

北海道の立春の日の出頃

太陽が昇ってきました。

東南東の地平線辺りの色がひときわ濃く明るくなって来たのを感じ、その辺りをじっと眺めていると太陽がついに昇ってきました。

まだ昇ったばかりの太陽の明かりは、日中ほどの強さこそ無いものの、さっきまでの暗闇だった時間とは比べものにならない程明るくなり、辺りの風景まではっきりと分かってきます。

まるで1日の幕が上がる様な感じだ。リレーのバトンはついに夜から朝へと受け渡されました。

けあらしが発生しています。

千歳川の毛嵐

朝の橙いろに染まる毛嵐(けあらし)

そうこうしていると、川面から湯気の様なものが立ちはじめ、それはあっという間にモクモクと雲の様になっていき、昇って来た太陽の橙色に染まっていくのが見えました。

そう、けあらしです。

しかもぼくが見たかった、モクモクのけあらし!

けあらしは更にモクモクとなる

千歳川の毛嵐

視界がふさがるくらいまで

けあらしは徐々に増えていき、ぼくの目線の辺りまでモクモクと昇ってきました。

朝陽とぼくの間のモクモクとした毛嵐に、太陽のあかりが乱反射して良くわからない感じになって来ました。

カメラで撮ってみると乱反射している辺りは完全に露出オーバーで、写真としてはどうなのだろうという一枚ですが、その状況を説明するのにはわかりやすいかもしれません。

「こんなにモクモクするのかー!!」と興奮を抑えきれず、綺麗だな綺麗だなと思うばかりです。

他にも撮影しに来られている方がいた。

ぼくは夢中で夜から朝への空の色、そして川のけあらしの様子を見たり写真に収めたりしていたのですが、気がつくと同じ様に川の様子を撮っている方がいました。

おはようございます。とお声がけして「本当に綺麗ですね」と、少しお話しをさせてもらいました。

数日前には少し下流側ではマイナス20度以下になった朝があって、その時は千歳川が結氷していたそうです。本当に寒い朝だったのでしょうね。

冬の朝と河川敷

ここでカメラのバッテリーが切れました。

暫くすると、けあらしは徐々に薄くなっていき、それと共にぼくのカメラはバッテリーが切れてしまいました。

それほど沢山の枚数を撮っていた訳ではありませんが、マイナス17度の中ではバッテリーが減るのは速いのです。

おそらく冬キャンプをする人なども経験があるかと思いますが、寒い中ではスマホの充電がどんどんなくなっていくのと同じ現象です。

ぼくは交換用のバッテリーを持って居ないので、いつも持ち歩いているモバイルバッテリーをカメラの充電用のUSB端子へ繋ぎ、充電しながらなんとか再び撮影を続けました。

白鳥と出会う。

白鳥と川面

朝の綺麗な景色は予想以上でした。

ぼくがカメラの充電が無いだとかモバイルバッテリーを接続しているなんて時も、朝の時間はどんどんと進んでいきます。

そしてもう一度カメラのファインダーを眺めた時、何かか居るのが見えました。

そう、水面に白鳥が現れたのです。

「わあ!白鳥だー!!」と思いながら、野鳥を驚かせないように、そして心の中で大いに興奮しながら、カメラのシャッターを切ります。

朝の明かりとけあらしの中、ゆっくり泳いで進む白鳥は本当に美しい姿です。

そして一度は少なくなった毛嵐が再びモクモクと増えて来て、その中を進んでいく白鳥を夢中で眺めて何度も写真に収めました。

同じ様な構図ですが、この時に撮った白鳥のいる川の写真を何枚か続けて載せておきます。

白鳥と朝の川
白鳥のいる朝の川
毛嵐

朝の時間は夕方と同じ様に、刻々と色や明るさが変わり、一瞬たりとも同じ時がない事をまざまざと感じさせてくれます。

そして毛嵐のモクモクが少ない時と多い時とが有ることも知ることが出来ました。

街に朝が来る頃。

河川敷の木々と冬の朝

向こうの道路は朝の通勤時間。

時間は7時を過ぎ、仕事や学校へ向かう人の車やバスの往来が多くなって来ます。

向こう側の道路を走るバスの窓から、この川の様子を眺める人もいます。

毛嵐の見える川

仕事や学校へ行く途中でこんな景色が見られるのは、きっと素敵な一瞬でしょうね。

こうして太陽が昇って来たというのに、なんだか冷え込みは一段と強くなってきた気さえします。

これはダイヤモンドダストだ。。

ダイヤモンドダスト

子供の頃以来、久しぶりに見ることが出来た。

日が昇って、なんだかもっと冷え込んで来た気がするなんて思いながらも、ぼくはまだファインダーを覗いてシャッターを切っていました。

この綺麗な朝の時間を撮っておきたかったのです。

そうするうちに、視界にキラキラと輝く何かが見えてきました。

千歳川とダイヤモンドダスト

ダイヤモンドダストだ。

撮影した写真を拡大してみると、ダイヤモンドダストが写っているのがわかりました。

再び肉眼で太陽と川面の間くらいを見てみると、確かにこれはダイヤモンドダストです。

キラキラと輝いて、それは小さな生物が舞っているようにも見え、とてもとても綺麗です。

子供の頃に住んでいた街で、気温が低い朝によく見た記憶がありますが、それ以来ずっと見ていなかったので、とても興奮しました。

ぼくは「ダイヤモンドダストだあ!」と声を上げ、その自分の声にも気がついていました。笑

そしてまたけあらしが川面を覆う

毛嵐

これで何度目の大きなけあらしだろう

川面のけあらしは、大きくモクモクとなったと思えばやがて消え、しばらくすると再びモクモクと発生し、それを何度か繰り返していました。

まだ暗い中にここへ来てから2時間弱の間、ぼくはずっとその様子を眺めていました。

美しい朝の時間。

この日ここで見た朝の風景は、思っていたよりもずっとずっと美しくて、それはモクモクのけあらしだけではなく、白鳥もダイヤモンドダストも。

そして暗い夜の中から朝へのリレー、「暁」「東雲」「曙」という順に明るくなっていく朝の時間。

そのどれもが、早起きをして極寒の中で川を眺めに来て本当に良かったと思えるもので、僕が見たそんなひとときをこのブログで紹介できる事も、とても嬉しく思います。

これでおしまい。

朝の千歳川

二十四節気と暮らす日々。

これで今日の立春の頃に見た千歳川の様子のお話しはおしまいです。

今日も最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

他にも、朝焼けや日の出や朝陽のことを書いた記事は「朝陽や日の出」というタグでまとめてあります。もしよかったらこちらもご覧ください。

余談になりますが、実はこのブログの運用を無理のない形にしたいと、去年の末くらいから考えていました。

そんな時にふと、ぼくは自身の暮らしや身体の調子について二十四節気を意識して過ごしている事を思い出しました。

それは鍼の先生が教えてくれたもので、「季節の変わり目に体調を崩しやすい兆候がありますので、おささるさんは二十四節気を意識して暮らすと良いですよ」と言われ、それ以来ぼくは「二十四節気」と過ごしていたのです。

おささるろぐと二十四節気。

そこでこのブログでも、二十四節気に合わせた僕目線の北海道の暮らしや風景、札幌近郊の季節やその移ろいをお伝えしていくのがちょうど良いのではないかと思う様になりました。

筆は遅くて更新も途切れ途切れだったのも、年に二十四回と考えれば無理のない形ですし、もし余裕のある時には他の記事も挟んで行けたら良いですし。

これからはそんなふうにして、このブログを引き続き書いていけたらなと思っています。

そんなわけで、これからもどうぞ「おささるろぐ」をよろしくおねがいします。

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