ーこれは、簡単なおはなしです。ー
*第一話からものがたりというタグでまとめています。
【第五話:大きな川まで】
皆さんお久しぶりです、コウダイです。
しばらく筆をとっていなかったけど、俺はずっと元気です。
前に高校の出入り業者さんから教えてもらった「別にそこら辺でも綺麗な風景や美しい時間は結構あるんだよ」という言葉の通り、俺はあれからチャリで河原へ行って、そのあとも空港の少し北の方にある駅までチャリで行ったりして、そこから風の抜ける川の風景を観に行ったりもしていた。
そしてすっかりその風の街が気に入って、就職と共にその街で一人暮らしを始めた。
職場の人からは地下鉄沿線の方が便利なのにとか言われたけど、ここは少し歩けば川の風景も自然もあるからいつでも風や自然の匂いを感じることが出来るのが良いんだ。
それに大きなスーパーもコンビニも病院もあるし、不便だなんて感じたことすらないし、地下鉄沿線よりこっちの方が快適なのにとさえ思う。
時々大きくて白い鳥も見かけるけど、それがなんていう名前なのかはまだ知らない。
–
大きな河原まで小さな電車旅。
自転車は今でも大活躍をしているけど、最近は電車で出かけることも多くなった。
隣町の海沿いの駅まで電車で行って、潮の匂いを感じたり、ざぶんざぶんと波が寄せて返すのを観ているだけでも楽しい。昼頃に着いたのに気がついたら夕凪の時間までぼんやり観ていたのは秘密だ。
最近じゃ、もっと色々な所へ行って沢山の風景を見たいな、川のある風景は特に好きなんだよなーなんて思っていくようになってた。
そういえばこないだの休みはひどい嵐で外出が出来なくて、家でゴロゴロしながらスマホで検索していると、あるブログを見つけた。
「おささるろぐ」っていうブログ。
俺はその中でよく書かれていた、石狩川の河川敷の風景をどうしても観たいと思った。
で、そのブログを書いている人が「いつか新駅から河原まで歩いて行ってみたい」と書いていたので俺もやってみたくなり、今日はさっそくその新駅まで電車に乗って向かっているわけだ。
この街じゃ誰もが知る有名な製菓店の名が冠についた駅だ。新駅ができるのは20年振りのことらしい。
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6月の風と河川敷

新緑の頃。
電車からホームへ降りて大学がある終点の方へと遠ざかっていく電車を見送ると、目の前に鮮やかな緑の風景が見えた。
遠くには鉄塔も見える。
心が躍るってのはこういうことなのかな。
よくわかんないけど、旅の始まりはいつだってこんなふうにワクワクする。
それだけは確かだ。
–
初夏の日差しの中で。
駅の中はいたってシンプル。
けど、大きな窓から初夏の日差しがたくさん入って来ていて、温室みたいな心地よさも感じる。
時刻表で帰りの時間を確かめておく。
スマホで撮っちゃえば楽だな!よし、帰りはこの時間の電車に乗って帰ろう。
そうそう、スマホといえば、出かけるたびにスマホで写真を撮る様になったんだけど、実はカメラも欲しいと思い始めている。カメラがあればもっと綺麗に、そこにある雰囲気まで撮れるような気がするんだ。
ただカメラは高いから慎重に選びたいものだけど、出来ることなら早めに手に入れたい。
身近に相談できる人もいないし、自分なりに調べてはいるけれど、どれを買っていいのか自分には何が合うのか、いまいちわからないでいる。
自分にはマイクロフォーサーズ?っていうのがいいかなってとこまではわかって来たんだけど。
駅前の風景

駅を出ると強い風が吹いていた。
日差しも強くて、気温も暖かい。
というか暑いくらいだ、風に飛ばされない顎紐付きの帽子を持って来てよかった。
駅前はまだ全ての工事が終わったわけではないようで、重機がガタガタ工事をしていたけど、その横を抜けるような通路が確保されていたので安心だ。
さて、ここから河原までは直線距離だと近いけど国道を渡る信号がないから、駅の名前にもなっている製菓店の方まで一旦ぐるりと回って、川に近い信号を渡ってから国道のちょうど橋の下をくぐってから河原へ行ってみることにした。
大体の位置関係はおささるろぐっていうブログのこの記事を参考にした、細かいルートとかは乗ってなかったのは自分でなんとかするから大丈夫だ。
しばらくすると河原に着いた。
初夏の河原が迎えてくれた。
やっと到着!ここまで歩いて35分くらいかかったかな。
ここの風景を観てみたかったんだ。
おおー、噂に聞く羊さんもいるな。
風も心地よいし、空は広い、向こうに見える橋梁の雰囲気もいいな。
あと、送電線の鉄塔もいいし、やっぱり自分の足で訪れて自分の五感でその場所の雰囲気を感じると全然違う。
やっぱり来てよかった。スマホで写真も撮ろう。
今の時間とこれからのこと

ふたたび。
カメラで写真撮ってる人もいるなー、声かけてみよ。
「すいませーん、こんにちは!何撮ってるんですか?」
「ああ、はいこんにちは。あれーー、もしかして高台高校で声を掛けてくれたコウダイくん?」
「あー!!学校で俺が相談させてもらった方ですよね、あの時は本当にありがとうございました!あれから河原にチャリで行きました!最高でした!で、いまは就職して空港北の駅近で一人暮らししてて。で、最近は電車でもあちこち出かける様になって、今日は新駅からここまで歩いて来たんですよ!」
「へー、そうだったんだ、お役に立てて嬉しいよ。ついこないだもコウダイくんのこと思い出してさ、あれからどうしたんだろうなーとか思ってたんだよね、それにしてもこんな所で再会するとはねー笑。そう、ぼくは今ここで風景の写真をとっていたんだよ。」
「そうだったんですね!俺もあれから川の風景が好きになって、色々調べてるうちにおささるろぐっていうブログを見つけて、そこにここのことが書いてたから、電車で来てみたんです」
「おささるろぐ、、、それ書いてるのぼくなんだけど。」
「えええええ!!ほんとですか??」
「うん、mizunaraって名前で書いてるけど、みんなおささるさんって呼んでくれるから、そう呼んでもらっていいよ。」
–
カメラのこと。
「あ!じゃあいっこ相談したいことがあるんですけどいいですか!」
「また相談だね笑、いいよ、全然大丈夫。今度は何かな。」
「俺、いまスマホで写真撮ってるんですけど、やっぱりカメラもほしくて、自分なりに調べたんですけど、予算とか大きさとか重さとかで言ったら、なるだけ安くて自転車でも楽々持っていけそうなマイクロフォーサーズ?がいいかなって思ってて、どう思いますか?フルサイズとかAPS-Cがいいってのはわかるんですけど、毎日持ち歩きしたいし。」
「なるほど、そこまで調べがついてるならマイクロフォーサーズでもいいんじゃないかな」
「やった!実際に写真撮っている人に言われると安心します!」
「でもさ、後からやっぱりAPS-Cやフルサイズの方が良かったなーとか思うのも残念だと思うから、よかったら次のブログ記事で、ぼくがマイクロフォーサーズを使ってた頃の写真を載せておいてあげるよ。」
「そういうのすっごく助かります!嬉しいです。」
「あと、ぼくがその頃どういうレンズを使ってたとか、こういうレンズもあったらなーとかさ、そういうのも書いておく?」
「はい!もし書いてもらえたら参考になるのですごく嬉しいです!!」
「おっけー」
–
それから。
俺はそのあとおささるさんと連絡先を交換すると思いきや、その場でインスタのアカウントを作らされてフォローし合うということになった、、。そして、こんな所で会うならそのうちまたどっかで会うでしょ!とか言われて、じゃあまたねってことになって解散した。
ちょっと変わった人だったけど、、作例楽しみだな。実はまだFujifilmのAPS-Cとちょっと悩んでたし、マイクロフォーサーズの作例は気になる。
Fujifilmのカメラは少し大きくて重いけど、フィルムシュミレーションの感じとかも気になってて。
しかも俺はパソコンを持ってないからカメラからスマホに転送してって使い方になるだろうし、写真を編集しなくてもカメラの中で雰囲気のある写真を撮れるってのも魅力なんだよなー。
–
風の匂いとか。
そういえば、おささるさんが写真を撮るときに気をつけてることも教えてくれたんだった。
自分で撮った写真を誰かに見てもらったり、他の人の写真を見ることで、もっと上手く撮りたいなとかもっと雰囲気を出したいなとか思えるようになるってこととか。
気になるカメラがあるならインスタで機種名をハッシュタグ付けて検索して、自分が好きな雰囲気の写真を撮る人をフォローすると良いよとかも教えてもらった。
あとは、写真を撮る前にその場所で自分がどう感じるか。風とか色とか匂いとか、そういうのを自分がいまどう感じているかってのを大事にして、撮るのはその後でいいって言ってたな。
まだそれがどういうことかまではわからないけど、なんとなく言いたいことはわからないでもない。
たぶん、俺がいま住んでる風の通る街の心地よさとか、そういうことだろうか。
kodai.
つづく。