冬の終わりと春風の色

河川敷の春。

あれは確か2020年の春が始まるかどうか、3月に入って何週か経った頃だったと思う。

すこし不思議な光景をみた。

ちょうど大きな橋を渡っている時だった、眼下で数人がサークル状になって揺れていたのだ。

「なんだろう」

もう一度見ると、ただ揺れているのではなくて、それぞれが楽器を持って演奏しているのだとわかった。

もしかすると練習場所もステージも急に閉ざされてしまったのかもしれない。

それで楽器を担いで雪が残る河川敷まで練習しに行っていたのだろうか。

そんな推測をすることしかできないけれど。

それにしても気温はせいぜいプラス5℃ほどしかなく、大きな川の河川敷なら風も強くてとても寒いだろうと思う。

耳を澄ましてみたけれど、強い風でバンドの音はぼくの所までは届かなかった。

でも、そこには音楽を奏でるひとたちの熱量が確かにあって、ぼくもなんだか励まされたのを覚えている。

まるで雪原に綺麗な花が咲いて風に揺れているみたいだった。

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春が近づく頃

海を見に行ってみた。

まだ春が来る前の頃は、どんよりとしている。

溶けた雪で大気が煙ったようにぼんやりと見えたり、強い南風が吹いても積もった雪が巻き上げられて、まるで真冬に戻ったみたいだと感じたりもする。

けれど、ここから見える海のはるか遠くに、明るい場所が見える。

春はすぐそこまで来ているよと教えてくれるみたいだった。

日が暮れる頃。

川の向こうにある海の方から夕方の色が少しだけこっちに近づいてきた。

まだその色は、これからやってくる春を期待する程しかないけれど、あともう少しすれば様々な色で鮮やかになる。

花のこと。

毎年この頃になると花を買って部屋に飾る。

飾ると言っても、小さな花をカップ酒の空き瓶に水を入れて挿すだけなんだけど。


それでも、その色彩が部屋中を春の期待で満たしてくれる。

それがとても心地よい。

鳥のはなし。

先日ぼくの部屋から見える木に、ずんぐりとして、すずめより少し大きな鳥が止まっているのを見た。

しばらくすると居なくなっていたので、どこからか飛んで来て一休みしていたのだろうと思っていた。

ところが翌朝カーテンを開けると、またその鳥がいた。

昨日と同じ鳥のようだ。

お気に入りの休憩場所なのだろうかとも思ったが、よく見ているとしずしずと木の奥の隙間に入っていくのが見えた。

もしかすると営巣しているのかもしれない。

カーテンの開け閉めも今までよりゆっくりにして、出来るだけそっとしておこくことにした。

やはりもうすぐ春が来るのだろう。

あとがき

この記事を書きながら聞いていたのは、

羊文学の「光るとき」

羊文学のYoutubeチャンネルでもこのMVが観られるようになっているので、時間があったらぜひ聴いてみてほしい。

このMVでは水辺で演奏するとても美しいシーンがあって、それであの日みた河川敷バンドのことを思い出しました。

「光るとき」は、とても好きな曲です。

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