本とオールドレンズを携えて。

オールドレンズ

これはとても綺麗だった日のものがたりです。

*第一話からものがたりというタグでまとめています。

【第三話:本とオールドレンズを携えて。】

こんにちは、おささるろぐです。

いまは初秋の頃のはずですが、駅を降りてみれば暑いくらいの日差しでした。

木々の中を歩きはじめると「なぜ今ジャケットを着ているのか」という程の気温であることに気がつき、ベンチのあるところで上着を脱いでカバンに仕舞い、また歩いて行った。

ジャケットの下は半袖だったけど、それでも少し暑いくらいなのです。

そんな気候だったこともあり、この日は綺麗な木漏れ日の写真がよく撮れました。

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木漏れ日の午後

MC ROKKOR-PG 50mm F1.4

馴染みの場所で

ところで、みなさんは同窓会というものに出たことはありますか?

ぼくはお引っ越しをした後に何かしらの手続きを怠ったせいだと思うのですが、そういったお知らせが届いたこともなく、少年時代のことをその頃の誰かと「ああだった、こうだった、いやそうじゃないな」なんて言い合う機会も無いまま今まで過ごしてきました。

ところがある日、古書店でぼくの過ごした時代のその場所のことが書かれた本を手にする機会があり、せっかくなのでこの日はその本を左手に携えて、懐かしい風景を見て回りました。

本は家で文字を追うよりも、それを見ながら一緒に歩いてまわった方が、ずっと楽しそうだと思ったのです。

探検のはじまり

MC ROKKOR-PG 50mm F1.4

ずんずん歩いていく

「ここって前はどんなだったけ」と思えば、その本の栞のページを開いて確かめて「ふんふん」、また次の場所で栞を開いて確かめて「あー、そうだったかも」なんて。

そんな具合にです。

そうなるともう記憶の探検は止まりません。

あっちにも行って、こっちにも行って。

そんなふうに本とぐるぐる巡って歩いて、ぼくのうっすらとした記憶とその本に書かれている言葉や挿絵を重ねていくと、記憶の断片は徐々に鮮やかな一枚の大きな絵のようになって見えてくる気がしました。

これはなんて不思議なことだろうと思う。

初秋の青い空

MC ROKKOR-PG 50mm F1.4

見上げてみれば

初秋の空は真夏のそれみたいだけれど、セミも鳴いていないし、蚊がいっぱい飛んでいる訳でもない。

むしろ日陰に入れば、ほんのり涼しげで乾いた空気が秋を思い出させてくれるくらいで。

こんなに都合の良い天候があるんだなと思うほどです。

「あー、そういや写真撮って無かったな」と思い、頭上を見上げると綺麗な青空が見えた。

雲も綺麗だな。

シャッターを押して撮ってみる。

紅葉も始まる頃

MC ROKKOR-PG 50mm F1.4

木々が色づき始めていた

いろいろな場所を巡るうちに、色づいた葉のあるところに着きました。

やはり秋なのです、今日はこんなに穏やかで暖かな日ではあるけれど。

どうしたって季節は止まらずにずーっと進んでいくのです。

もっといえば季節も進むけれど、自分もまたその季節の中にいつも居て、「今」というのがずっと連続しているようなイメージといえばいいだろうか。

うまくいえないけど、そんな感じ。

赤い木の実

MC ROKKOR-PG 50mm F1.4

色づきや実の成るころ

本の次のページには挿絵が添えてあり、「赤い木の実が綺麗です」と書いてあった。

確かにぼくの目の前にも同じ様な赤い実がある。

案外同じ場所だったりして、なんて思いながら、またシャッターを切ります。

木漏れ日の中で

MC ROKKOR-PG 50mm F1.4

陽が傾いてきました

木々の間から木漏れ日が綺麗に差し込んでいて、遠くの木漏れ日はキラキラと輝いて見えています。

そうそう、今日はレンズ1本しか持ってこなかったのです。

懐かしい風景は、このオールドレンズで撮ると決めていたんだった。

そうしたらきっと色々なことを思い出すんじゃ無いかと思って。

夕日が綺麗なころ

MC ROKKOR-PG 50mm F1.4

次第に夕方になり

木々の隙間から射す明かりは山ぎわへと近づくにつれ、より強く、より濃い色になっていきます。

ぼくはオールドレンズのピントをあえて思いきり外して、その明かりがいちばん綺麗に見えるように撮ってみた。

ぼくと本の記憶が重なって紡ぎ出す絵に、あともう少しの時間、この明かりが照らしてくれるといいなと思ったからだ。

窓越しの日暮れ

MC ROKKOR-PG 50mm F1.4

夜へと

あるお家の窓越しに、日没ぎりぎりか日没後すぐか、それくらいの時間のとても綺麗な橙色が映っていたので、思わず一枚撮ってみた。

そんな風にしていたら、気が付くと辺りはもう暗くなっていて、夕凪みたいに静かな夜の始まりだった。

本の文字は街灯の明かりでならまだ読める。

ふとスマホを開いてみると歩数計の最初の数字が「2」から始まるくらいになっていて、そんなに歩いたんだと驚いた。

じゃあ今日はこここまでだなと、栞を挟んで本を閉じ、静かな夜の中を駅へと向かい帰りました。

帰宅後のこと

家に帰ったあと思い出した様に、カバンからジャケットを出してハンガーに掛けようとした時、米粒くらいの小さな虫がくっついていたのを見つけた。

「あぁ、さっきまで居たところから連れて帰ってきちゃったんだな」と思い、手に取って窓を開けたら勢いよく外に飛んでいきましたとさ。

mizunara.

つづく。

今日は久しぶりのものがたりの記事でした。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

朝の時間

甘い葉の匂いと秋の朝。

2022年10月10日

「甘い葉の匂いと秋の朝。」も描きました。

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