ノイズが混じる遠い街のAMラジオを、ぼくたちはいつまで聴いていられるのだろう。

つい写真に撮ってしまう風景があるように、ぼくには好きな音の時間があります。

その音を聴いている時はなんともいえない安心感があって、なんていうかどこか懐かしさがあるような人の温もりのような、とてもひとことじゃ表しきれないような音の空間だと思っている。

それは、AMラジオのナイター野球中継。

どこかの球団をひいきにしているということも無いのだけれど、AMラジオから流れてくる野球中継はなんでだか気持ちが安定するのです。

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江別ラジオ放送所

江別ラジオ放送所

夕日に染まるNHK札幌第1放送の送信所

綺麗な夕焼けの日。

後ろを振り返ると白い月と、NHK札幌第1放送の送信所のアンテナが夕日を浴びて茜色に染まっているのが見えた。

あまりに巨大でよくわからない感じがするこのアンテナが、石狩、空知、後志地方のAMのNHK札幌第1放送を送信している。

どうやらAM局は斜陽の頃みたいなんだ。

NHKは2025年9月30日に、AM放送「ラジオ第2」の放送波の廃止認可を総務省に申請することを発表しました。新たに「新NHK AM」と「新NHK FM」の2波に再編する予定だそうです。

おそらくはコストを見直した結果なのではないかと考えられます。

もともと民放連はAM局について、運営コストの安いFM局への移行について制度改正の要望をしていました。

そして総務省も「AM局の運用休止に係る特例措置」。簡単にいえば、運用するのに負担が大きいAM局を休止させて、FM局に転換する際に、AM局の運用をしばらく休止しても良いという内容を発表していました。

こういう流れを見ていると、AMラジオが斜陽の時期に差し掛かっているというのは誰の目にも明らかなのです。

AMラジオの音がする空間が好きだ。

なかでもナイター中継の放送は気持ちが安らぐ。

誰にでも好きな音の風景があるかもしれません。

ぼくにもいくつかありますが、なかでも夏場の18時以降に家に居る時や車に乗っている時には、つい「ナイター中継」を聴いてしまう。

その音がある空間が好きだからです。

AM放送でナイター中継を聴いているとなぜだか安らぐのです。

独特の音質だからこそ記憶との繋がり。

AMラジオだから音質はザラザラしていてFMと比べればお世辞にも良くはないのですが、そのザラつきこそがぼくの心をなぜか癒してくれる気がしています。

いまでこそ球場は室内のドーム型が多いですが、以前は屋外球場が一般的で、そのため試合の開催は天候に左右されていました。

そして試合が開催されればザラつくAM放送越しに、その球場ごとの空気が伝わってくるような気さえしていたのです。

浜風が吹いている、湿度が高い、夜になっても気温が下がらず暑い夜。熱を帯びた実況アナウンサーが伝えるそんな言葉からどんな雰囲気だろうと、よく想像をしていました。

そうすると不思議なもので、天候や湿度によって打者がヒットやホームランを打つ時の打球音さえ違って聞こえてくるのです。

ぼくは子供の頃からそんなふうにナイター中継をぼんやりと聴いていて、大人になった今はナイター中継を聞くと、訪れたことさえ無い球場の雰囲気が目に浮かんでくるようになりました。

それはまるで懐かしい匂いを感じた時に、記憶の風景がフラッシュバックするみたいな感じなのです。

ナイターの球場を一度も訪れたことがないのにね。

Sunset.

この日、河原で夕日の風景を見ていて、ラジオのAM局送信所が見えたとき、なんとも言えないさみしさを感じました。

ところでSunsetという英単語は日没の意味のほかに、サービスが終了するという意味合いも持っているそうです。

報道によると、2028年秋までに全国47の民放AM局のうち、北海道と秋田を除いた44局がFM局への転換を予定しているといわれています。

こうしてFM局へ転換されればAM局は休止ということになるのでしょうが、北海道などはFM放送の受信エリアの兼ね合いなどでしばらくはAM放送が残るだろうと言われています。

個人的にはまたAM放送という陽が昇ってほしいと願わずにいられませんが、時代の変化からこの流れにあらがうことも難しいでしょう。

あとどれくらい放送してくれるだろう

AM放送がこの先あとどれくらい続くかはわかりませんが、あえていまAM放送を聞いてみるのもいいかもしれません。

もちろん音質はFM放送の方が良いですし、それにいまはスマホやPCのRadikoでラジオを聴いている人の方が多いのだろうとは思いますが、もしあなたの好きなアーティストや俳優さんや芸人さんのラジオ番組をリアタイで聴いているのなら、そしてそれがAM放送している局ならAMラジオで聴いてみてはいかがでしょう。

ザラつく音のAMラジオから届く声や音楽は、高音質な放送にはない何かを感じるかもしれませんね。

鉄筋コンクリートや鉄骨づくりの集合住宅だとAMラジオが入りにくいと言われていて、そんなときは外に持って行って人気のいないところで聴くなんてのも風情があるかもしれません。

なんて勝手なことも書いてしまいます。

遠い街のラジオも。

先日、AMラジオを聴いていてチューニングがずれてしまい、再度合わせようとしたとき、他の地域の放送が聞こえてきて、気になってどんな放送局が聞こえるのかダイヤルを回し続けてみました。

日付をまたぐような夜の時間、ノイズ混じりにかろうじて聞き取れた、遠い街のAM放送はこんな感じでした。

ラジオ福島1098KHz、秋田放送936KHz、TBSラジオ954KHz、文化放送1134KHz、ニッポン放送1242KHz、ラジオ日本1422KHz

AMラジオは、上空にある電離層のD,E,F層のうちD層が夜になると消え、E層に反射して遠くまで聞こえる性質があるそうで、それで夜間はこんなふうに遠い街のラジオまでノイズ混じりに聞こえたりもするのです。

ぼくはいつまでこんなふうに遠い街のラジオを聴くことができるのだろう。

そんなふうに思わずにはいられないのです。

今日も最後までおつきあいいただきありがとうございました。

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